JAPAN NORTHERN LIGHTS

2022.12.10

アルペンスキー選手における膝前十字靭帯の発生と予防②

 

 

次は発生予防に大切な② 用具の理解です。

 

ブーツの硬さ


 

 

体重と硬さに相関がありまして体重が重ければおもいほど硬いブーツを履いているのですが50,60キロぐらいの選手で100を履いてる選手や150,170という選手もいます。

レベルが上がると硬いブーツを選ぶと思いますがレベルに合わない硬すぎるブーツは膝への負担になります。

体重が軽くてもレベルが高い選手はスキートップでターンを作るため、内にスキートップが切り込みやすく硬いモノでないとつぶれてしまうため、体重に見合わないデータになっている可能性はあります。

今回のアンケートでFISポイント55点が最高だったと思いますが、滑るバーンが硬い場合は硬さ170のブーツも必要になってくるかと思います。

ブーツの硬さは車のサスペンションと同じ考えになるかと思います。

固いブーツであるほど安定性が増します。

柔らかいと力が逃げやすいので安定性はかけますが自由に動かしやすい、自由にターンしやすいです。あまりにも体重 レベルに合わない硬いブーツは レスポンスが良くて反応がいい分、ちょっとした衝撃でスキーが反応しやすい状態になります。

結果的にダイレクトに雪面から力がかかり膝への負担につながります。

速く滑るためにはブーツの硬さは必要ですが、バーン状況が日本みたいに緩い場合は反応が良すぎてハイスペックになりすぎてしまう事はマイナスに働いてしまう可能性はあります。

レベルにあったブーツ選びも怪我を予防するためには大事です。

 

 

解放値


 

 

 

 

 

 

 

自分にとっての適切な解放値は?硬い雪と柔らかい雪では?..難しいですよね。

今回の調査結果では明らかに高い数値になっているかと思います。

基本的には体重と解放値に相関はありましたがやはり同じ体重でもかなりばらつきがあるのがわかります(選手のレベルが違うのでばらつくことがおかしいことではないです)。

バーンが硬い時は反応が良く誤開放の可能性も大きくなるのでやや高めに設定でよいでしょう。

柔らかい時は足場がルーズなため、力が逃げて怪我につながる動きが出ても、雪が逃げてくれると思いますので高めに設定する必要はありません。

雪が柔らかく荒れやすい時は(硬くても荒れてきたときは外れやすくなりますが)解放値を上げすぎては荒れているコース内で板が外れないと大きな衝撃が外から膝にかかるので板が外れたほうが安全です。

外れないとケガをします。

誤解放で転倒した際のけがの発生は5%,未解放だった場合は50%という報告もあります(池田 臨床スポーツ医学:Vol14No519975)。

硬い雪では些細な振動も反応良く拾ってしまいます。

急激に良くない動きが発生した場合は小さな反応も拾い怪我につながってしまうので板が外れたほうが良い時もあります。

SGDHでの誤解放は大けがにつながるので怖いですがGSSLのスピードでは誤解放で怪我をする可能性は高くないです。

外れないことでの怪我のリスクを考えましょう。

大会等のここ一番では上げても良いですが、逆に練習では数値の上限を設定する必要があるでしょう。

不要に上げすぎるのは危険かなと思います。

身長、体重にもよりますが、本来足の大きさに対して解放値は設定される部分もあります。

ビンディングは前後から挟む力で固定されているので、足が小さく体重が重い方が外れやすくなっています。

スキーブーツのソールが摩耗によりすり減ってくるとビンディングとの適合性が悪くなり誤解放や不適切な高い解放値設定となり前十字靭帯を損傷しやすいとも言われています (Scand J Med Sci Sports. 2019 May; 29(5): 736–741)

基本的なことですが誤解放した際は何故誤解放したのか?ブーツの裏に雪がついていなかったか、前圧が合っているのか等をまず確認してください。

これらも踏まえて、状況に応じてコーチやサービスマンと相談して解放値を設定するのが良いかと思います。

 

次は発生予防に大切な③ 身体的因子と体つくりです


 

 

つぎに前十字靭帯を損傷した選手にはどんな特徴や癖があるのかというのをアンケートによる質問項目から解析した結果です(身体測定の数値などの因子は含みません)。

唯一関連したのが正座をする際にお尻が踵につかない選手が前十字靭帯を切りやすいのか切って手術しており膝が固いのか。

という結果でした。

術後の可動域の再獲得、四頭筋、ハムストリングスの柔軟性を獲得しましょう。前十字靭帯損傷受傷前後で滑りに対する考え方、滑りの特長や身体的特徴に変化がある選手もいると思いますので以下の結果は参考程度にしてください。

 

 

 

コーチ、トレーナー、ドクターで少しでも怪我の発生を減らす努力を今後も続けてまいりますので御協力を宜しくお願いします。

東千葉メディカルセンター 整形外科 佐藤 祐介