ジャパンノーザンライツ

2022.03.08

JAPAN NORTHERN LIGHTSのスキー指導の軸、“解剖物理学”とは?

・はじめに


 

皆さん、こんばんは。
JAPAN NORTHERN LIGHTSコーチの谷 直人です。

僕からはこのSTORYでの記事を通して、

JAPAN NORTHERN LIGHTSのアルペンスキー指導の心臓ともいえる
“解剖物理学”をベースにしたスキー技術について、少し踏み込んだお話を
毎回皆様にお届けしていければと思っております。

 

・解剖物理学とは?


 

まず、“解剖物理学”についてお話しさせてください。

 

「解剖物理学」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、一言で言うと

「解剖学を、物理に基づいて探求する学問」

です。この言葉自体、まだまだ日本での認知が低く一般的には知られていないのが現状です。

 

JAPAN NORTHERN LIGHTSでは、
この“解剖物理学”を専門に研究する大学教授の方を我々チームの専属の技術責任者として
お招きし、アルペンスキー技術向上のカリキュラム開発にご協力いただいています。

 

ここで少し、解剖学と物理学についてもおさらいを。

 

 

 

「解剖学」とはご存知の通り、“人体の形態や構造の理解を目指す学問”です。
簡単に言えば『人間の身体の構造の説明書』のようなものです。

人体の構造は、車と一緒で各部品に『名前と特徴』があり、
各部品が連動することによって、“運動”として機能しています。

例えば、腕を曲げるためには『上腕二頭筋』という筋肉が大きく活躍しています。
筋肉が収縮する事で腕を曲げる事が行われています。
当然負荷がかかり強く曲げようとすれば、上腕二頭筋が強くなければいけませんよね。

骨格や筋肉といった身体の部品と、その連動性を考えることで
「よりアルペンスキープレイヤーとして強化していくべき部品はどこなのか?」を
明らかにしていくのです。

 

 

「物理学」とは、自然界の物質と現象の理解を目指す学問です。
雪の上を滑るのは当たり前に感じるかもしれませんが、
実はここには「重力」のおかげであり、物理学が根本的に関係しているのです。

スキーを語る上では最も大事になる“落下”を理解するのもこの分野になります。

「解剖学」と「物理学」。

冒頭でご説明したように、この2つの学問を掛け合わせて、
人体の運動を考えていくのが解剖物理学なのです。

 

 

 

・解剖物理学をスキー技術指導に取り入れた理由


JAPAN NORTHERN LIGHTSの結成にあたり、
我々コーチ陣の中に共通であったのが、既存のアルペンスキー指導に関する問題意識でした。

 

・既存のスキー指導は日本人の特性を生かしたコーチングなのか?
・既存のスキー指導は、選手達の目線にたったとき、本当に必要なことだけを教えることができているのか?

・既存のスキー指導は、人体の構造に沿って最適化された内容なのか?
・果たして今まで日本で教わってきた指導は世界で戦えるものなのか?

 

このような事を考え、スキーが盛んなヨーロッパに目を向けてみると、、、

ヨーロッパでは、技術の進化によりスキー板製造に車メーカーが設計で携わる事もあるなど、
そもそもスキーという競技に対しての考え方・技術の裏にある理論づけの部分から大きな差があると感じています。

これは、単によく言われる「身体の構造が違う」という言い訳だけではすまされない、
指導者側や業界全体に共通する問題を感じざるをえません。

残念ながら今の日本のスキー業界にしみついている、
「古いスタイルの根性論ベースの指導」や、
「感覚的で抽象的な、選手の才能に依存してしまう抽象的な技術指導」から脱却すること。

そもそもアルペンスキーという競技について根本から学びなおすこと。

これらを踏まえた上で、
選手出身だからこそわかる自分たちの経験と感覚に、理論をプラスして
本当に必要な指導を若い選手たちに伝達することができたなら、

我々JAPAN NORTHERN LIGHTSが目指す“世界で通用する選手を育成する”
スキー指導が実現できるのではないかと考えたわけです。

 

 

・解剖物理学を日々のトレーニングに落とし込むところからスタート


出発点として、まずは我々コーチ陣全員で、アルペンスキーを行う人間の身体について
徹底的に学び直しました。

 

冒頭でご説明した通り、人体には無数の部品があり有効に使うことにより
パフォーマンスを最大限発揮することが出来ます。

 

では、そのパフォーマンスを発揮するために、
僕たちコーチ陣は、具体的に何ができるのか?

 

日々のトレーニング、「スキー技術指導」「スキーメンテナンス」
「マテリアルでの調整」「陸上トレーニング」それぞれのカリキュラムに、
解剖物理学をどのように掛け合わせて組み込んでいくのか?

また、選手一人ひとり身体の形は異なります。
個々に合わせてよりパーソナライズされた指導を柔軟に組みたてて、
それぞれの選手が目標に向けて最短距離で成長し、努力出来る環境を目指しています。

 

 

・我々のコーチングもまだまだこれから


僕たち自身、まだまだ学ぶことばかりですが
着実に手応えは感じています。

日々のトレーニングの中で、選手たちの滑りが格段に飛躍したのを感じた時。

大会でしっかりと結果を出したのをこの目で見た時。

選手ひとりひとりに「アスリート」としての思考が
根付いてきたな、と発言から感じ取れた時。

日々の小さな歩みではありますが、
“自分たちのやり方は間違っていないし、
もっともっと選手の才能を開くことができる”
と確信しています。

次回以降も、アルペンスキー×解剖物理学というテーマで
さまざまな情報を書き綴っていきたいと思います。

 

ありがとうございました。

 

次回は、桒原コーチにバトンタッチして“選手の目標設定”について
記事を書いてもらいます。お楽しみに!

 

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JAPAN NORTHERN LIGHTS
Coach 谷 直人